まちのこぼれ話〈下作延・上作延・向ケ丘地域〉

 

代々守り継ぐもの

三ツ橋 健蔵さん
(みつはし けんぞう さん)

昭和2年生まれ 87歳
川崎市高津区上作延在住

第十七代目「藤左衛門」を受け継いだ三ツ橋さんに、
戦前から戦後にかけての生活の様子などを伺いました。
(平成27年10月5日)

三ツ橋 健蔵さんの写真

戦前から戦後の記憶について聞かせてください

 

 昭和14、15年になると、上作延のこのあたりは畑を軍に買収されてね。 畑は一坪二円、山は一坪一円という安い値段でした。無理やりだったから、それはもうひどい話ですよ。 祖父もがっかりしていましたね。祖父にとっては娘ばかり続き、私は本当に久しぶりに生まれた男の孫だったから、 学校を卒業したら跡取りとして思いっきり働いてもらおうと思っていたようで、 「いよいよだな。これからだな」って期待してくれたのに、軍に安く畑を買い取られてしまって。
 

消防団と青年団

 

 学校を卒業すると同時に「大人の仲間入り」で消防団に入るのです。 地元の若い人17人が団員で、先輩にいろいろ教えてもらいました。 火事があると向ヶ丘の農協から有線放送が流れて消防団が出動するのですが、 消防署の車が来るのを待っていたら焼けてしまう、なんて時は消防車より早くポンプ車で現場に駆け付けたものです。
 青年団にも入っていました。上作延の郵便局のところに青年倶楽部という集会所がありました。 青年団では4月15日は創立記念日の「花見」って決まっていたので、向ヶ丘遊園の桜を皆で見に行ったりしてね。 酒飲んでわいわい騒ぐのが楽しみでね。

代々守り継ぐもの

 

 三ツ橋の家では代々「藤左衛門」の名前を継いでいて、私で第十七代になります。 家の敷地の中には、数代前のご先祖様が建てた「お社」もありますよ。
 他にも、例えば嫁を迎えたり、子供が生まれたりという、いわゆる家族が増えたお披露目には 「三つ目のぼたもち」を作って親戚や近所に配ります。 季節の行事は毎月のようにあって、正月の御節、豆まき、お節句、彼岸、お盆などは親戚や近所の人が来るので、 料理を出してもてなさないとね。菱餅や蛤を使ったりしてね。 秋には9月の十五夜、10月の十三夜もあるし、万度の御会式や、それぞれのしきたりもあるから大変でね。 お祭りの時はお赤飯や煮しめを近所に配り、お互いにやり取りをする習慣があったね。 親戚に配るのも前は五升だったけど、少しずつ簡単になっているのかもしれないけどね。(PDF版の抜粋です)

三ツ橋さんの家の敷地にある鳥居の写真

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